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Whisper
2024/05/10[Fri]
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2012/04/06[Fri]
4月といえば花見の季節だー!
という訳でそれらしきものを。
去年は確か彪生でちょっと切なめな絵を上げたんだったかな。
気付けばもう季節イベントも此処に来て一周したってことだね。早いなあ!
今年は絵が間に合いそうもないからSS投下。

いつもの如く他所の子お借りしてまーす^0^






【夜桜】


「嫗殿、花見でもしないか」

毎日の日課。刀を握ったその日から床に欠かす事無く続けている手入れ。
床に胡坐を掻いて磨き上げた刃の表面を眺めて居ると、
鏡と同等の役割果たした表面に映り込んだ霧遥の姿。
刃物の表面越しにお互い視線を合わせる。
霧遥の腕には風呂敷に包まれた重箱らしき四角い箱が抱えられていた。
恐らく花見で振舞う為に自ら作った菓子だろう。彼はそういう奴だ。

「トキハも居るんだろ?」
「ああ。直ぐ行くと返事を貰った」
「ふーん」

直ぐに自分の返事をしなかったのは迷いがあったから。
誘われた事に対してではなく、かと言って他の奴が居るからってわけでもなく。
寧ろいつも絡んでる奴なのだから遠慮しようとも思わないが。
ただ、少しだけ別の迷いがあったから。

いつもなら即答で返す返事がない事に霧遥もその微妙な歯切れの悪さに気付いたのか一瞬目が合った。
悟られまいと剣先の向きを変えて表面越しに互いを確認する事を阻止する。
あくまで自然体、何気ない仕草で腰を下ろしたその場から立ち上がり、身体の向きを変えて霧遥を見た。
手にしていた刀を肩に担いで。

「あの丘にあるデカイ桜の木だろ? これ終わって気が向いたらな」
「そうか。ではトキハ殿と二人で先に楽しんでるよ」
「あぁ。調子に乗って飲み過ぎんなよ。またあとでな」

冗談交じりに軽く笑って。それに応えるように霧遥も小さく笑う。
深入りはされずに内心ホッを撫で下ろしながら、去っていく背中を見送った。

人気のなくなった周囲。時折吹く強めの風に葉が舞い散る。
地面へ降ってくる様を眺め、担いだ刀を一気に振り下ろす。葉は綺麗に二枚に分かれた。
更にその流れで地を蹴り別の場所へ舞い散る葉を次々と斬っていく。
手入れ後に必ずする刀の切れ味を確かめるための行為。と同時に精神統一の意味も兼ねて。
刃先に因って各二枚ずつに分かれ小さくなった葉が音もなく地面へと落ちる。
その様を眺めながら、ふと視界の端に映った、何処からか風に乗ってやってきた桃色の花弁。
ゆっくりと深い息を瞬きと共に吐き出した後、暫しその小さな花弁を無言で眺めた。
再び吹く風に飛ばされる前に、剣先を伸ばしてその桃色を刺す。
地面よりも少し視界に近付け眺める花弁は素直に美しいと思った。
それからまた吹き込んだ風に因って手元を離れ空中を舞っていく様子を目で追う。

「いつまでも引き摺っててもしゃーねぇよなぁ…」

ポツリ、と。一人心地に漏らして刀を鞘へと納めた。
辺りは夕焼けも濃く、もうすぐ日も暮れるだろう。
橙と蒼の混ざり合う絶妙な色合いの空を一瞥し、ふっと息を吐いて友人達の待つ場所へと向かった。

***

「うさちゃんおっせーよ!」
「うるせぇ!兎呼ばわりすんじゃねぇよ猫科ッ」

丘を登りきったところにある一本の大きな桜の木。
昼間はその見事な桜を見ようと疎らに人が集まるが夜ともなると、
まだ幾分か肌寒さも相まって人は殆ど居ない。
特に今夜は運も良いのかどうやら来ているのは自分達以外には居ないようだ。
既に一人盛り上がっているトキハに姿を捕らえられるなり絡まれる。それもいつものこと。
だから当たり前になった答えを半ば反射的に返して応戦する。
対するトキハは先行して飲んだ酒の効力か、大して気にも留めずその場から立ち上がって出迎え、
早々に肩を回しては酒を勧めようと片手に瓶を持っていた。
その対面上に腰を下ろす霧遥にワザとらしく視線を送り大袈裟な溜息を吐く。

「トキハお前酒くせぇ」
「花見なんだから飲んで当然だろ~。嫗も早く飲めよ!」
「相変わらずコイツ酒癖悪ィな。ベタベタ絡んでくんな」

酒が入ると何かと絡んでくるようになるトキハを半ば強引に引き剥がして二人の間に腰を下ろす。
静かに嗜んでいたらしい霧遥が、誘いに来た時手にしていたあの重箱を差し出してきた。
中にはやはり予想した通り何種類かの手作りと思しき菓子やつまみが納められている。
良く見ると白と緑と桃色の三色団子まであった。
ある人物をふと思いだしながら、横目に霧遥を見ると目が合う。その瞬間思わず笑った。

「間違っちゃいねぇけど、お前これいつものクセで作っただろ」
「はは。流石は嫗殿、バレたか」
「何だよ二人だけで楽しそうにしてんなよ、俺も混ぜろ!」
「だーかーらっ、いちいちくっ付くなっつーの!てめぇは団子食って酒飲んでろッ」

霧遥と俺の会話を聞いてかトキハが強引に割り込んできた。
覆い被さるように来た一回り程度大きな身体をぐいっと押し返し、
片手で霧遥特製の団子を鷲掴んでその口内へと押し込んでやる。
普段なら直ぐにでも抗戦体勢に入るトキハも酒のお陰か、動きを止めて団子を噛み締めている様子。
だが相変わらず上から退く気はない様で、流石にどうでもよくなってくると代わりにとばかりに、
トキハの手から握り締められている酒瓶を奪い取って一気に呷る。
とは言っても実際残された量は大した事はなくすぐに空になってしまう。
中身のなくなった瓶を後方へ追いやって、マイペースに口へと酒を運ぶ霧遥を見やった。

「ハルー酒足りねぇ」
「俺もー」
「嫗殿は来たばかりだからまだしも...トキハ殿は酔い潰れても知らないぞ」
「よゆーよゆー」
「さっさと潰れろトキハ」

悪態吐きながらも何だかんだで楽しんでいる自分が居た。
昼間から続く適度な風が桜の木を靡かせ、満開に咲いた花弁が舞い散る。
すっかり辺りは日が落ち月明かりで薄暗い中、二
人の友人の横顔と桜のシルエットはなかなか様になってちょっと悔しい。
そんなこと、口が裂けても言わないが。

寄り掛かって来るトキハと攻防戦を繰り返しながら夜桜を眺めていると、
追加の酒瓶手にした霧遥が差し出してくる。それを受け取ってまた三分の一程度一気に飲み干した。
酒は元々強い方ではあるが流石に毎日飲むような程溺れていない。
こうやって何かの切っ掛けに飲む酒はまた違った味がする。
そんなことをぼんやりと考えて酒を飲む手が止まっていると不意に横からトキハに奪われる。

「な~にチビチビ飲んでんだよ。男なら一気にいけよ!」
「ちょ、おま、やめろ!て言うか退けーっ!!」

更に圧し掛かりながら奪い取った瓶を口元に寄せて強要してくるトキハ事倒れ込んで受け止める。
助けに入るのかと思いきや、すぐ隣に居たはずの霧遥は重箱を携え一歩後方へと避けていた。
そんな相手を恨めし気に一瞥するものの、強引なトキハに抗戦するのに全力を注ぐ。
なんとか瓶を取り上げ重い身体を伸し上げながら、出来た隙間から這い出る。
無事に生還して立ち上がるなり酒瓶をあおり、ご希望通りに一気に飲み干してやった。
それを胡坐を掻いて見上げたトキハが「おお~」と興奮気味に歓声を上げるが、
そんな相手に空になった瓶を投げつける。

「ったく」
「はは、嫗殿も良い飲みっぷりだな」
「ハル、お前は飲まな過ぎ!」
「まだ酒あるしハルも一気だろ~」

そうやって俺達は暫く賑やかに月明かりの元、花見を楽しんだ。

桜をゆっくりと眺めたのはいつの頃だっただろう。
もう何年も花見なんてしてこなかった。
桜は、嫌いじゃない。嫌いじゃない、けど…良い思い出はない。
そんな先入観から最初は誘われて躊躇ったが、気付けばそんな事はどうでも良くなっていた。
自分自身の中でまた新たに出来た思い出。




いつか一人でも、もう一度桜を眺められる日が来るだろうか。



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タイトルを何となく英語翻訳(@エキ○イト)してみたら「Nocturnal view of cherry blossoms」になってちょっと長すぎやしないかという事態が発生。でも発音してみると個人的には凄く好き。ノクターン系て響きイイヨネ。

嫗とトキハさんとハルさん!仲良し三人!
トキハさんとはバトルもしちゃうよ!肉食VS横暴草食。
ハルさんは見守ってくれる系?(笑)そんな3人で花見。
嫗にはちょっとした事情があるけどその辺はまたの機会に○ω○

思った以上にスムーズに書き上げられてびっくらこいたー!
ラスト駆け足感があるけれど...○×○
でもって少しずつ絡みなSSも増やしていきたいところ。


※口調や性格の多少の違いは大目に見てやってくれると有難いです_(:3 」∠)_

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