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Whisper
2024/05/21[Tue]
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2010/12/21[Tue]



他の人にはナイショだからね。約束だよ――







フレ彪 【日常編】




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静かな夜。星が瞬いて、月の光が淡く街に降り注ぐ夜。
人々が寝静まった頃、誰も居ない街を駆け抜ける。
足元を照らす光は淡く今にも消えてしまいそうだけど、優しさに溢れていた。
強過ぎる昼間の光とは対照的に静かで穏やかだ。
通い慣れた街を抜けた先にある大樹の立つ丘。其処を目指して。

街から眺める大樹は総ての人を見守るように聳え立つ。
唯一、その大樹だけは一年中変わらぬ姿で何十年も何百年も其処に立っているという。
数十年周期、春にのみ小さな白い花を咲かせる。
今はその季節ではないけれど、月光で照らし出された葉が白く光ってまるでその花を連想させた。
人々は街を守る大樹として神聖なものと祀り、其処へは近寄ろうとはしない。
踏み入れば大樹が穢れてしまうからと。中には立ち入ろうとする者を阻止する者さえ居る。
だけどそれはただの言い伝えだ。

何年も何年も昔から訪れ、踏み入れ慣れた大樹はいつだって変わらぬ姿で迎え、
周囲は若い木々達で囲まれ小動物達も沢山居る。
踏み入れた森林の中、周囲の木々は季節の終わりと共にその葉を散らして木の葉の絨毯を作り上げていた。
その中を奥へと向かうと緑の茂る大樹があった。延々と変わらぬその姿はいつでも其処にある。
夜風が葉を揺らす心地良い音。
静かな足取りで歩み寄って片手でそっと、何百年も生きる幹に触れた。


「ずっとずっと変わらない」


君は、どれだけの生と死を見守ってきたの?

触れて目を閉じると大樹の息吹を感じられる気がした。
人とは比べ物にならないほどの長い年月を生きてきた彼は何を見て何を感じてきたのだろう。
その生命の長さを感じれば自然と心が落ち着く。
悩んでいた事も、些細な疑問さえちっぽけに思えてくる。
そっと瞼を開けるとタイミングを見計らったようにこの葉がハラリと足元へ落ちた。
屈んでそのまだ青々とした葉を拾う。

「今は凄く、幸せだよ。幸せ…」

噛み締めるように言葉を紡いで。
大樹に背を向ければその視界の先はやってきた街。通い慣れた街。
朝が来てまた明るく照らし出されれば活気の戻る街。
そこには沢山の友達が居て…自然と嬉しさがこみ上げる。
自分の身体の幅よりも大きな幹に背を凭れ目を閉じた。
一つ、また一つと深呼吸繰り返して。自分が確かに此処に居る事を認識する。

「君にね…紹介したい人が居るんだ。
 今度一緒に来るから、楽しみにしててくれたら嬉しいな」

静かに聳え立つ大樹に語り掛けるように呟く。
大樹は呼応するかの如く葉を揺らし心地の良い音を奏でた。
落ち着いた心に染みる葉の音色に表情和ませて。
幹から背を離しゆっくりとその場を後にする。



***


森林を抜け元来た道とは途中道を違え、街とは別方向へと向かう。
街から大分離れた場所、そこに自宅がある。
今まで何度も街へ引っ越そうかと考えた事もあったがそうはせず、今もずっと同じ場所。
見えてきた自宅は明かり一つ付かずに周囲の街灯もなく月明かりに淡く照らし出されるのみで。
フッと小さく息を吐き、少しだけ重い足取りで帰路に着く。

近付いていくと薄暗い家屋の脇に立つ人影に気付いた。
落ち着かない様子で玄関前を左右に行ったり来たりする光景に首を傾げて。
ふと、その人影がピタリと止まると歩み寄る自分に気付いたのか、走り寄ってきた。

「彪ーっ!」

静かな月夜に明るい声が響く。
走り寄ってきたフレスコが目の前で止まり、にぱっといつもと変わらぬ元気な笑みを向けた。
こんな真夜中に現れた友人に驚き隠せず数回瞬きを繰り返してしまう。

「フレ!?え、なんでこんな時間に?ていうかずっと待ってたの!?」
「え、ああ・・うん。たまには夜遊ぶのも楽しそうだな~とか!
 と思って来たは良いけど彪居ないんだもんなー・・・帰ろうかとも思ったんだけど帰ってくる気がした」

この寒空の下で?とは何故か聞けなかった。
それよりも、帰ってきたその場に、誰かが居てくれた事が嬉しかったから。
少しだけ・・・ほんの少しだけ熱くなるのを感じたのを隠すように笑い返す。

「フレってば帰って来なかったらどうすんの~?あははっフレっていつも無計画だよね~」
「う、うるさいな!行動力があるって言えよっ」
「あはははっ」

いつもと何ら変わらぬやりとりが何倍も楽しく感じた。
一人きりの夜に慣れていたからこそ、違う夜がとても新鮮で感情を昂ぶらせる。
自然と溢れた笑みで返すと、むっとしたフレスコも直ぐに笑い返す。

人里離れた場所に住処を作った理由。それは障害物のない空に瞬く星が好きだから。
一人の夜も星空眺めればきっと寂しくなんかない。

だけど、今解った。誰かと一緒に眺める星空の方が、何倍も・・・何倍も寂しくないって。

ふと見上げれば冬空に瞬く無数の星がそこにある。
不意に見上げた自分に習うように隣に立つフレスコも一緒になって見上げた。
言葉を交わすわけでもなく、ただじっと暫く無心で見上げた。

「ねぇフレ」
「ん?」
「・・・ううん、なんでもない」
「えーナニ?すっげー気になる」
「教えてあげな~い」











君に見せたい場所があるんだ。とっておきの、秘密の場所。



今度、一緒に行こうね。






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ちょっとだけ世界観的なものもチラリ出来て満足。
細かい部分もきちんと決まったら詳細は載せたいなと思っている地図上の世界観。彪生の住処は普段フレ君や他の友達みんなと遊んでいる街とは少し離れた場所にある。主体になってる街は鳰やフィオ達が居る場所。そこから彪生を含む数人が各所少し離れた位置に住処を構えてる形。
現段階では他に堕夜・洙艶・甌・妼の4人は街に住んでない。甌はこの街で崇められてる大樹のある森林付近に住処があるから彪生が大樹に行くと遭遇しようと思えば出来る。けど設定の都合上、靫と一緒で彪生は甌には会いません。その代わり緋炎と甌はこの森林で言葉を交わす事はあるかな。その辺もしっかりと決めていきたいなあ。



***




純粋な友情を望んでる。だけど純粋であればあるほど悩む事もあるよね。



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